市場規模が想定より下回るならシェアは関係ない 〜中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)

「この世界に足りないのは金ではない。ビジネス社会に足りないのは企業家の精神、夢、価値観である」
馬雲の強い志を感じたのが、アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦を読了したとき。


中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)

中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)


中国というと賃金が安く、世界の生産工場だと考える時代は終焉に向かいつつある。
世界の生産工場と考え、進出を考える企業も、尖閣諸島沖問題で、マスコミが騒ぎ立てる昨今、中国への進出はリスクであり、親日のタイやベトナムを生産工場と考えるが多い。


中国のEC市場において、BtoBの代表格として「アリババ」。CtoCの代表格として「タオバオ
日本の人口は、1.3億人。中国は、13億人。単純に10倍の市場である。


中国のECに関してはよく知らず。ニセモノが横行する世界で、せっかく市場規模がなかなか育たないと考えていた。
だが、中国を生産工場と考えるよりも、中国のマーケットで勝負することを考えることが多くなっている。


本著では、「タオバオ」自信の成功要因。また、ユニクロやkappa等の法人や粉ミルクを売っている個人が、「タオバオ」の中で成功している事例・要因を伝えている。


日本人の中では、中国との取引は信用がなかなかできないと考える人が多いであろう。だが、中国人同士でも問題は同じで、「ちゃんと届くのか」、「ちゃんと金払うのか」という信用の問題のところなのである。


それでは、市場が拡大しない。潜在力があるだけ、その潜在力を発揮しなくては、なんの意味もない。


中国のEC・CtoC市場の大層はebayが占めていた。そんな中、ジャック・マーがとる戦略は、市場規模を圧倒的に育て、勝つということ。10の市場で、8確保して80%シェアに対して。市場を育て100の市場を形成し、8しかとられていなければ、92%のシェアをとれると考える。


中国市場の潜在力を見極めていたのであろう。また、中国の商習慣(チャットでのやりとりが多い等)も理解して市場の拡大をはかる。手数料を「0」にしたり、決済、流通、チャット、SNSなどを自らつくり、信用を高め、市場を形成し、市場の拡大に努めていった。(といった意味では、「タオバオ」のことだけでなくて、中国の商習慣も垣間見れる。)


また、「タオバオ」が起業のプラットフォームとなっている点もおもしろい。ユニクロ等の企業だけでなく、個人でもすぐに商売を始められる仕組みを整えており、EC市場の拡大だけでなく、中国の拡大を志、またその先の世界への息吹を感じられる。


ビジネス社会に足りない企業家の精神、夢、価値観を醸成する役目を担っており、ジャック・マーの志が形としてみえる。感動した。