ヒューマン2.0(渡辺千賀)

 

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) (朝日新書)

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) (朝日新書)

 
 シリコンバレーを楽観的な視点からみている立場として、現状のシリコンバレーを的確に言葉にしている。シリコンバレーを表す際に、楽観的というフィルターは通っているが、それ以外のフィルターはほとんどないので、リアルな現場が手に取ってわかる。この書を一冊読めば、シリコンバレーの基礎は、問題ないだろう。
 インターネットが資本主義を加速させ、富の分配の方式が多様化している。格差は広がるが、上流が下流に慈善活動として、富を分配しているので、循環の構図はできてきている。循環の構図ができれば、そのシステムは続く。多様化したのは、職種、働き方である。だから、肩書きの必要性が薄れてきたのかもしれない。肩書きはナンですか?というよりも、あなたは何ができるのですか?に答えなくてはならない。要は、「個」なんだなと。そんなことは、誰でも理解している時代になった。だが、理解で終っている段階でもある。特に日本では、シリコンバレーとはほど遠い。仮にシリコンバレーが理想の資本主義を実現しつつあるのであれば、日本は遅れているにもほどがある。それは、国民性の問題でもある。島国が問題なのかもしれない。言語が問題なのかもしれない。そういった意味では、アメリカは、移民の国であり、資本主義を実現するには、もってこいの国の成り立である気がする。だが、どこに標準をあわせるのかという発想が時代遅れなのだと感じる。既存のものに頼ることしかできない思想が危険信号なのであり、人間がやらなくてはならないことが、考えるところに集約されていく社会では、より何かを生み出す思考が必要とされる。