鉄板病(おちまさと)
- 作者: おちまさと
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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世の中に蔓延している思考回路を鉄板病という言葉を使いうまくとらえ、皮肉っている。言葉にしたくてもできないようなところを、鉄板という言葉をつかって説明する視点はおもしろい。内容もかなり読みやすい。国民全員が読んだらどうなるのか。鉄板という基準が変化すればおもしろい。
それはいいとして、鉄板病にかかっている人は、自分で考えることをやめてしまった人たちであると感じた。人が考えたことを考えるのが得意である。そして、その人が考えたことが、的を得ていてそこに人が集まっているならその考えにのっかる。そこには、一種の思想のようなものを感じる。国民全体が鉄板教を崇拝しているともいえる。
自分で考えているつもりでも、それは他者がどう思っているかを考えているだけであり、自分が本当はどうしたいのかという考えではない気がする。たしかいに、他者がどう考えているということも大事である。だが、そのバランスが崩れてしまっていては危険である。物事をひとつみるとしても、視点が違えば見方も変る。いまは、どの視点が正解なのかを考えているだけで、「どういった視点でみるべきなのか」「どうみたいのか」という自分の考えが欠けてしまっている。
自分で考えることを止めればそれはそれで楽なのかもしれない。だが、楽であっても楽しいのであろうか。ミシュランに載っているお店にいって、そのお店が自分でどう感じるのかをまとめる人はいるのであろうか。とりあえず、「おいしかったよ、だってミシュランに載っているもん。」と他者が選んだ基準が自分の基準になってしまうのは、楽しくない気がする。